福岡デザイン専門学校

2018未来デザインネクスト 開催レポート!

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観察を通して、クリエイティブを語る。
未来デザインネクスト2018終了。

(レポート) 田所恵介 (本校教員・デザイン思考、コミュニケーション論、コピーライティングなどが専門)

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ

本年度の未来デザインネクストは、多摩美術大学美術学部講師で映像作家である・菅 俊一先生を迎えて行われた。会場となったのは、福岡市中央区六本松に昨年新しくできた福岡市科学館・サイエンスホール。本校の学生はもちろん、教育関係者・デザイン関係者、協賛企業・後援団体、さらには多くの一般参加者も含め、300名を上回る聴講者で会場は満員となり、フォーラムはスタートした。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
一部のキーノートスピーチに登壇した菅 俊一氏は、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師としてデザイン教育に携わる一方、コグニティブ(認知)・デザイナー/ 表現研究者/ 映像作家という幅広い領域で活躍されている。特にデザインを認知科学の領域から捉える試みが高い評価を得ており、今回のスピーチでも、ご自身の具体的な仕事を通して、平易な語り口でわかりやすく、興味深い事例をお話いただいた。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザインネクト
福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
テーマは「気づく→考える→作る『仮説とその検証によって作る表現』」。
「観察」という行為を通して、ヒトやモノ、場所など、あらゆる関係性の中に潜む「意味」を読み取り、仮説を立てて、その仮説からクリエイティブをスタートさせるという、菅先生ならではのデザインの考え方が示される。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
「デザインというと、何か、最終的にはヒラメキや才能といった感性的なものに頼りがちですが、もっと、ある意味、科学的にアプローチできるものだと思うのです。一か八かのような成功は、プロとしては確率が悪いですよね。少なくともプロフェッショナルと呼ばれるクリエーターは、クリエイティブの完成度を上げるなにかしらのフレームワークを持ってることは確かです。私の場合は、それが、観察という行為なんです。」と語る菅先生。

NHK Eテレの人気番組「0655」「2355」の映像における表現手法は、錯視をはじめとするヒトの視覚認知機能が巧みに利用されていると言っても過言ではないと思う。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
2部のパネルディスカッションでは、デザインプロデューサーとして活躍される環境デザイン機構の佐藤 俊郎氏、意と匠研究所の下川 一哉氏、ファシリテーターには当校の特任講師である江副 直樹氏を迎え、「クリエイティブの出発点と観察」をテーマに、さらに掘り下げたパネルを展開した。特に、アイディアがカタチになる着火点となるクリエイティブジャンプの過程と、「観察」における仮説のプロセスの類似性や共通点、あるいは相違など、個人的にはこのあたりのディスカッションがいちばん白熱していたように思う。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
学生からの質疑もこの点が問われていたのは、本フォーラムの主題をきちんと理解してくれていると思った。良い質問が続く。学生にとって、深い洞察が得られたところまではいかなかったかもしれないが、「腑に落ちた感」はつかめたのではないだろうか。

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ
最後に、菅先生が今回のフォーラムで言及した要諦を記しておく。学生はこのあと、菅先生から出題された課題
「無意識の行為を設計する」に取り組むことになる。要諦を再度、復習しておこう。

【講演メモ】

・観察の技術:視点を変えて周囲の物事から気づきを得る
・分析の技術:集めたものから抽象度をあげて、核になる概念を取り出す技術。言葉にしていくプロセス。
・発想の技術:概念と事象を集めてパターンを作り、評価する技術。

・先入観を操作するために、踏み台としての制約を作る。
・観察や分析したもの同士は時間軸がバラバラ。
・結びつける素材の多様性。理論や映像、気になるもの。
・新しいアイデアは独自のデータベースから生まれる。
・日常の違和感を見逃さない。
・理由や要因を言語化する。なんとなく禁止。
・具体的な事象についてできるだけ抽象化し、普遍的な特徴だけを抜き出す。
・見つけた違和感と知っている知識の、見えない関係性。
・日々の継続的な観察と言語化が未来のアイデアを作る。

 

福岡デザイン専門学校(FDS) 2018未来デザ

[ 菅 俊一/ すげ・しゅんいち]

コグニティブ・デザイナー / 表現研究者 / 映像作家 / [多摩美術大学美術学部統合デザイン学科]専任講師

1980年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、様々なメディアを用いて社会に提案することを活動の主としている。主な仕事に、NHK Eテレ「[2355ID / 0655ID]」、[21_21 DESIGN SIGHT 企画展「単位展」]コンセプトリサーチ、[21_21 DESIGN SIGHT 企画展「アスリート展」]展示ディレクター。著書に「[差分]」(共著・美術出版社)、「[まなざし]」(ボイジャー)、「[行動経済学まんが ヘンテコノミクス]」(共著・マガジンハウス)、「[観察の練習]」(NUMABOOKS)。主な受賞にD&AD Yellow Pencilなど。

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